今回は人気商売のマーケティングについて解説します。
って言ってもやったことがあるわけではないのですが、紅白に米津玄師さんが出たということで、どうしてそこまで人気が出たのかを考察しました。
とりあえず言えることは、普通のビジネスライクなマーケティングではダメです。
結論から言うと、初期段階のアーティストのマーケティングは、
「作品力 or スキル」x「人物像」x「市場独占」=「バイラル爆発」
という方程式が見つかりました。
人気商売はコンテンツマーケティングも導線設計も通用しない
まずは、なんで普通のマーケティングではダメなのか、です。
商売のやり方自体は一般のものと変わりません。
お客さんのニーズに応えたら成功する。これ以外にあり得ません。
で、アーティストに求めるものって何なのか、と考えると「作品orスキル」と「人物像」です。
この2つの要素をお客さんのニーズに合わせることでファンになってもらえます。
普通のマーケティングがダメなのには理由があって、例えば人の役に立つブログを書いて、そこにYouTubeの動画を表示させておいて露出度を増やし、再生してもらおうとしても再生されません。
まずブログ書いて認知度を上げようという考えが、お客さんの求める「人物像」にはまらないわけです。アーティストとしてかっこよくない。
アーティスト市場のどこを探しても、自分でコンテンツマーケティングやって導線引いて、「人気になりたい!」って気持ちを丸だしにして、ファンを増やしている人はほぼいません。
「こんな人におすすめです^^」って作品を宣伝されたら、萎えますよね(笑)
ということで、アーティストは自分でお勧めしたり、商品の良さを語ったり、注目を集めるために作品やスキル以外のもの(コンテンツ)で客寄せしたり、こうした行為は「人物像」の質を下げますので、マーケティングとしてはマイナスの効果を発揮するわけです。
もう一度方程式を見てみましょう。
「作品力 or スキル」x「人物像」x「市場独占」=「バイラル爆発」
ということで、「人物像」がマイナスだといつまで経ってもバイラル爆発が起こらずに0状態をキープすることになります。
ちょっと大事な話をここに挟んでおきます。
作品もスキルも人物像も、絶対的に「良い」ものというのはありません。
いつでも念頭に置きたいのは「その市場のニーズに応えられているか」です。
どんなに自分が納得できる作品を作ることができても、そこにニーズがなければ誰も反応しません。
また、どこかにその作品を好きになる人がいるとしても、その人に聞いてもらえなければ評価されません。
どの市場に作品を公開するかを考え、その市場で愛される作品を作り、その市場で愛される人物像であることで、ファンが増えていきます。
好きなようにやりたいならそうすれば良いのですが、行きつく先は2つだけです。
見向きもされずに終わるか、運よくニーズにマッチするか、です。
実力は関係ありません。
ハブパーソンのバイラル爆弾
アーティストが有名になる瞬間をイメージしていきましょう。
・友達におすすめする(効果小・頻度高)
・アニメ、映画などに採用(効果大・頻度少)
・有名人がメディア経由でおすすめ(効果いろいろ・頻度中)
・ポータルサイトで再生数伸びて関連動画表示(効果小~中・頻度は作品次第)
こんなもんでしょうか。
全部根本的には口コミです。口コミのことを「バイラル」と言います。
「良い!」と思った人が広めてくれるわけですね。
常日頃から良いものを探していて、友達にすすめたり、ラジオで取り上げたり、アニメや映画に起用するアーティストを探してたり、良い作品を上位表示させるWEBサイトがあったり、
現実にそうした活動をしている人がいるということを忘れないでください。
これらの人たちを「ハブパーソン」と呼びます。ハブ(中核)となって情報を発信してくれる人たちです。
だから、見向きもされないなんてことはありません。
ハブパーソンに見初められて、拡散されていくのが自然でしかも速いバイラル爆破を起こします。
では、どうしたらハブパーソンに見初められるのか、ですね。
市場独占するための作品orスキルと人物像を身につけろ
もし、自分の作品に納得しているのに、誰にも見向きもされないのだとしたら以下の方程式をもう一度思い出しましょう。
「作品力 or スキル」x「人物像」x「市場独占」=「バイラル爆発」
作品力やスキル、人物像が、市場のニーズに合っていないので「良い」と思われていないということです。
原因として考えられることはいくつかあって、
・作品
・スキル
・人物像
・市場の選び方(作品を公開する場所)
これらを正しくニーズにマッチするように調整すれば、しかるべき人が見つけてくれる仕組みになっています。
「仕組みが悪い!」「この環境では運がすべてじゃないか!」と嘆く必要はありません。
自分のやり方を変えるだけでうまくいくようになっています。
つまり、
・作品を市場のニーズに合わせる
・スキルを市場のニーズに合わせる
・人物像を市場のニーズに合わせる
・自分がニーズに応えられる市場に移動する
とくに4番目はすぐに検討しましょう。
フォークソングをニコニコ動画に上げても、あまり反応は得られません。ということです。
これら4つがうまく行くと、「バイラル爆発」が起こります。
WEBサイトで上位表示されて再生数伸び、友達同士で良いな良いなと話題になり、少しずつ市場に浸透していきます。
大事なことは、ある市場を独占するという意識です。
作品が良いというだけでは口コミは起こりません。
ある市場において、一部の人に熱狂的に愛されるアーティストになったとします。
ただ、「大好きだけど、他の人が好きになるかは疑問。すすめるのは勇気がいるなぁ…」という状態では口コミは起こりません。
活発にコミュニケーションが起こっている市場を切り取って、その中で市場独占をするつもりで行かなければ口コミは起こらないということです。
「この人なら他の人にもおすすめできる!」「このジャンルが好きなのにこの人を知らないなんてもったいない!」
と思ってもらえるようになったら、その市場で自然に口コミが起こります。
米津さんの例を出すと、当時ニコニコ動画で「ハチ」という名前でボカロ作品を投稿していました。
このころの作品を並べてみると、やはりトップクラス。曲、イラスト、動画、すべてにおいてニーズに合致していると感じます。
そのため、ニコニコ動画ボカロ市場では「ハチ」の作品が市場を独占する勢いで広まっていきました。
狙う市場は自分に合っていることを優先してください。
でないと、ニーズに合わせすぎて「音楽つらい」となったら目も当てられません。
どこに、自分の感性でニーズを満たすことができるお客さんが集まっているか、と考えるのがいいですね。
近所のライブハウスでもいいですし、動画投稿サイトでもいいですし、なんなら学校の自分のクラスの友達グループでもいいです。
小さい市場を狙って独占してしまいましょう。
そして市場独占をしてからが面白いです。
独占市場の仲間たちによる「外に出ていけ運動」
まぁこれもバイラルなんですが、少し様子が違うので別枠にしました。
ある市場を独占するレベルまでニーズを満たすと、その市場から「外に出ていけ!」と外の市場にバイラルが起こるようになります。
例えば、ハブパーソンが「〇〇って知ってる?」って聞くと、「あ!知ってる!いいよねぇ!!」とその市場内では誰におすすめしてもほとんど知っているという状態になります。
誰に聞いても知ってる知ってると返ってくるものですから、みんなの頭の中には「誰でも知ってる〇〇さん」というイメージが染みつきます。
本当はその市場内だけで認知度が高いというだけなんですけどね。
社会全体的には「お母さん〇〇って知ってる?」「〇〇?俳優かなんか??」となって普通なんですが「〇〇も知らないの!?」という感じで、その市場の人達にとっては常識となるわけです。
この動きが「外に出ていけ運動」です。
何にも知らないお母さんが〇〇という人物を知ることになりました。
ラジオパーソナリティーも「これだけみんなが好きになるなら」とラジオで取り上げます。※意外と外の市場に出ると一般の人には「なんだこれ」感が強かったりする
相性の良いアニメに取り上げられたりします。
市場内のファンによる「もっとたくさんの人にすすめても大丈夫なんじゃない?」という感じが広まって、どんどん出ていけ運動が活発になります。
これは市場を独占した人だけの特別なマーケティング効果でしょう。
その市場の人たちのニーズを満たしまくって、感謝されて、愛された結果、こうした動きが生まれます。
話は戻りますが、はじめから「すべての人に」「たくさんの人に」という気持ちで活動をした場合、この運動は起こるでしょうか。
コンテンツマーケティングや導線設計をして、とにかく有名になりたい、とにかく人気になりたい、という気持ちで作品を作っても、この運動は起こらないですよね。
ある塊、あるグループ、1つの市場の人たちを喜ばせてこその「外に出ていけ運動」だと思います。
ニーズに応えることがすべて。これはビジネスもアーティストも同じだということです。
そして、変革の時です。
小さな市場拡大と作品や人物像の調整
否応なしに外に放り出されたら何をするべきか。
米津さんの場合、2009年~2011年のボカロ市場を経て、2012年には外に出るタイミングで本名公開で自分ボーカルの作品をどどっと発表しました。
彼がこのマーケティング理論と同じことを考えていたかは不明ですが、かなりタイミングがよろしいことで。
前項からの続きです。
「外に出ていけ運動」によって、外の市場に放り出され、相手にする市場が拡大することになりました。
つまり、市場が変わったということです。
市場が変わればニーズも変わります。
先ほどお伝えしたように、ラジオでそのまま流されると多くの人は「なんだこの曲?」となるのが普通です。
だから、外の市場にもマッチする作品へと調整する必要が出てくるわけですね。
米津さんの事例と照らし合わせてみてください。
タイミングばっちり。
作品もさることながら、ボカロ作品メーカー「ハチ」から「米津玄師」という本名への変換。
完璧な市場適応力。
今年は紅白出場しましたが、ここで「ハチ」という名前で「ボカロ曲」ではどうにもNHKじゃ手に負えません。
家族総出で見る番組としてはちょっと難しいでしょう。年も暮れません。明けても違和感が残ります。
ただ、もといた市場の人たちを裏切るわけにもいきませんから、大きな市場拡大はいけません。
自分で立ち位置をコントロールして、関連性のある小さな市場に足を延ばして、少しずつ拡大してくのが良いと思います。
ここでも大事なことは「市場独占」です。
次なる市場に足を延ばすのは良いですが、もう一度市場独占をしなければ「外に出ていけ運動」を起こすことはできません。
大きな市場をいきなり狙うとマーケティングがビジネスライクになりがちになって「人物像」が崩れます。
さらに、一度作品を抽象的でたくさんの人に当てはまるものに変えてしまうと「作品力」も崩れますし、もとの市場独占もなくなります。
こうなればいわば点と線。市場の独占は不可能になります。
この話をしていると、「人間なんてラララ」を歌っていた吉田拓郎さんがいきなり「結婚しようよ」を歌って、もとの市場の人たちからタイブーイングを受けた話を思い出します。
小さく拡大して、もう一度市場の完全支配を狙うしか道は無いということです。
これでは日本中に知れ渡るアーティストになるなんて到底不可能のように思えますよね。
しかし、少しずつ市場を独占していくとあるタイミングで光明が差します。
大規模市場になるほど「人気」そのものが人気を呼ぶ
米津さんを知らなかった人が、紅白で米津さんを見ます。
はじめて見た人にとっては「紅白に出るくらい有名な人」からスタートです。
ブランドが出来上がっているわけですね。
これは多く人にとって良い物なんだ、という前提からスタートするということです。
良し悪しではなく、純粋に「好き嫌い」で見てもらえるし、ミーハーな人にとっては「これがトップなんだ!すごい!」と思ってもらえます。
つまり、人気であることが人気を呼びます。
このへんが人気商売の限界値でしょう。
ゲーム実況の兄者弟者というグループを知っていますか?
動画やコメントを見ていると痛感します。
人気が人気を呼ぶとはこういうことか、と。
やはり人は、人の集まるところに集まりますね。
この領域に到達すれば自然に口コミで広がっていく状態になるでしょう。
そして、時代の変遷とともに新しい波にさらわれていきます…。
ここまでが人気商売トップの人たちが経験する流れでしょう。
自分に合った小さな市場のニーズをしっかりと満たし、バイラルを起こして市場を独占し、自然に起こる「外に出ていけ運動」に乗っかって市場を拡大、作品と人物像を調整しながら市場拡大が大きくなりすぎないように立ち位置も調整、人気が人気を呼ぶ段階にきたら後は好きなようにして時代の波にさらわれるのを待つ。
こんな感じで今回は以上です!